SEKAI NO OWARI インタビュー
「ブレーメン」という寄付のプラットフォーム



やりたくても「始める人」にはなかなかなれない

ジャパンギビング
ブレーメンの活動のきっかけについては、もうたくさん記事も出ておりますので、今回は少し違う角度のお話を伺いたいと思います。寄付を呼び掛けることは偽善じゃないかと言われる不安も多い中、今回バンドとして寄付を呼びかけたことに対して、不安や批判などはありましたか?
Fukase
最初のうちはやっぱりすごく不安はありました。批判は…思ったよりも、全然なかったですね。
というかほぼなかった。なんか、ちょっと時代が変わってきたのかな。
Saori
(バンドでの寄付は)ずっと続けてきていることで、最初は東北(東日本大震災)の時に支援グッズとしてリストバンドを作って。その後、熊本(熊本地震)でも。今回はブレーメンで、だんだんそういうバンド、いつも(寄付を)続けてきているバンド、というふうに見ていただいているからかも…
Fukase
突然感はなかったかもしれないですね。
Saori
うん。それに、自分たちが恐れていたより、世間もドネーションというものに対してすごく関心を持ってきているなと感じています。友人たちも今回のブレーメンに関しては、ありがとう、みたいな。「ずっと自分もやりたかったけど、自分が始める人にはなかなかなれないから、参加する機会を与えてくれてありがとう」って、いろんな人から言ってもらえたので。

中立でいることの大切さと難しさ

ジャパンギビング
ブレーメンを始めるにあたり、気にかけたことなどはありましたか?
Saori
一番気をつけたのは、中立の立場でいるということ。「動物をどういうふうに救います」とか、「これが正義だと思います」って言い切らないようにしようと。救い方にもいろんな方法があるし、殺処分をゼロにするやり方にもたくさんの正義があるので、「殺処分ゼロという最終的な目標を掲げて、いろんな人たちとやっていくつもりです」という。あくまでプラットフォームというか、(やり方については)自分たちの意見を持たない組織でいるということに注意しました。その方がみなさん参加しやすいかな、と思っています。
ジャパンギピング
動物愛護をうたう団体はたくさんあって、でもやり方はそれぞれ違っていますからね。
Fukase
今回PWJさんと手を組みましたけど、でも結局、みんなで協力しないとどうにもならないことなわけで。CDが発売してまだそんなに経っていないので、実際の動きはもう少し先になると思いますが、地元の団体さんとかともこれから一緒にやっていきたいというのはあっても、どの場所に何を作るとか、どうお金を使うとか、人によって考え方が違う。そこがすごく難しいポイントだったので、今Saoriちゃんが言ったように、僕らは思想を持たないということ、あくまでそのプラットフォームであるということがすごく大切なんです。でも僕らも人間なので、それを消し去るということがかなり難しいよね。
Nakajin / DJ LOVE
うんうん。
Saori
これからそのお金の使い道っていう具体的なところになってくる時、何を建てるのか、何にお金を使うのか、どうしても思想は出てきちゃう。なので、今のところは思想を持たないプラットフォームでいいんですけど、これからはもう少し「自分たちはこういうふうに思って、こういう団体とやっている」という説明は必要だなとは思っています。

すべてはチームワーク

ジャパンギビング
欧米のように寄付をするという教育を受けている国に比べて、日本は寄付に対する意識が低いとよく言われます。日本のアーティストなど影響力のある人たちは、寄付を呼びかけることで不要な批判を受けるリスクがあるから積極的になれないということは、事実としてあると思うのですが。
Saori
そうですね
ジャパンギビング
寄付を呼び掛ける人、つまりファンドレイザーがプラットフォームとしてフラットな立場でいるというのは、重要なキーワードだと思うのですが、これからファンドレイザーになってみようという人が、解決したい問題に対して勉強したり、知識を深めておいたりする必要はあると感じますか?
Fukase
最初はそう思ったんですけど、結局、すべてはチームワークだと思うんですね。専門的な知識を持つ人もいれば、そうじゃなくてビジネスとしてお金をまわす人もいる。例えば、病院にいる職員が全員医者である必要がないのと同じように、一人ひとりそれぞれ役割があって、その役割としての知識は必要だとは思うんだけれど、専門家ほどの知識はいらないと思っていて。僕らは、人に何かを伝えるという面で僕らの立場なりの経験が備わっていると思うので、できているとは言えないですけど、これまで活動してきて多くの人と向き合ってきた経験はあるよね。確かに、「たいして知らないくせに(そういう問題に)手を出してるんじゃないよ」っていうのが、なんとなく…誰が言ったわけじゃないですけど世の中にあるフレーズというか、誰が言っているのか分からないけど浸透してしまった考え方というか。その見えないモヤモヤした敵にモヤモヤして何もしないぐらいだったら、実際何かして言われた方が逆にスッキリすることもあると思うし。今の時代、誰からも批判されないで何かをするって難しいと思うんですよね。
Saori
最初は全部自分たちでやろうと思っていたんです。こういうものを作って、こういう考え方でって。でもPWJの施設に行き、色々と見せていただくうちに、あ、これは全然、全部自分たちだけでできることじゃないっていうのがよく分かって、じゃ、力を借りればいいんだ!って思ったんです。自分たちはプラットフォームになって、それぞれ専門の人たちと一緒にやればいいんだって。PWJも、自分たちの専門分野は自分たちができることがあるからって言ってくださって。私たちは動物殺処分がゼロになればいいと思っていて、それに向かってお互いにできることがある人たちと一緒に組んでやればいいことかなと思います。
Fukase
バンドもそうなんですけど、楽譜が書けたり音楽的な知識があったりする人って、一人いればいい。全員がそうある必要はないと思うんです。お互い長所を生かせるところがあった方がよくて。逆に全員そうだとチームワークって良くなかったりする。だからブレーメンでも、僕らに足りない部分を補うようにチームを増やしていけたらなと思っているんです。ブレーメンを独占したいという気持ちはまるでなくて、僕らみたいなアーティストと一緒にやってくれる人がいるんだったら歓迎しますね。
ジャパンギビング
そういうのもありなんですか(笑)。
Fukase
全然ありです。
Saori
あ、この間も、ハンコを作っている方…
Nakajin
ああ、あったね。
DJ LOVE
うん。
Saori
ブレーメンのロゴを使ったハンコを作ったり売ったりすることで得た収益を、寄付するという形で参加してもいいですかってお話いただいて。
Fukase
即答だよね、いいですよ(笑)。
Saori
そういう形でいろんな人と一緒にできるのはいいなと思って。
ジャパンギビング
輪が広がっていかないと殺処分は実際ゼロにならない。自分たちだけで静かに閉じこもってやるのではなく、みんなでやろうよって言ってくれる人がいるだけで、その輪が広がるんですよね。
Fukase
最初は、いろんな人と話して、「悪いことを考える人が近寄ってくるかもよ」とか言われたりもしたんですけど、そんな悪い奴いたら、見てみたいよね、逆に。
Nakajin / DJ LOVE
だね(笑)。
ジャパンギビング
今回、PWJさんと一緒に活動をしていて、それ以外の団体とのコンフリクトなどはありましたか?
Fukase
それはないですね。今回ブレーメンというプロジェクトでは、PWJさんに支援するというより、PWJさんに協力してもらって一緒にやっているという感じなので。もちろん他の団体さんを支援することも僕らにとっては本意なんですけど、みなさんも分かっているとおり、そんなお金ではそもそも足りないわけで、全然。だからどういう優先順位にするかの判断はこれから出てくるかもしれないですけど、なるべく穏やかな話し合いの中で解決していけたらなって。無いものは無いから出せないよってなっちゃうときはありますよね、どうしても(笑)。
Saori
動物殺処分とは全然違う問題、例えばエイズ孤児の問題で、他の団体さんが一緒にやりたいという話はときどきあります。サイン入りのグッズをオークションにかけて利益を寄付するような、私たちも手軽に参加させていただけるものは、特に断る理由が無ければやろうってメンバーで決めていて。ただ、ここまで大きなブレーメンみたい規模のものは、10個も20個も抱えられるものじゃないので難しいですけど。

持続可能じゃなければ意味がない

ジャパンギビング
一貫して肩の力が抜けてるのがいいですね。
Fukase
僕ら、ライブのセットがすごい豪華なんですよ。じゃあ、それを無くして寄付すれば全員救われるんじゃないのって言われそうだなと思うんですけど、そんな額では全員救われないですし。僕らがどうして肩の力を抜いた方がいいとずっと言っているかというと、持続可能じゃなければ意味がないからであって。お客さんが自分たちに求めているものが全然提供できなくなったら、僕らがミュージシャンとしていられるかどうかも分からなくなってきますし、それって、持続可能じゃないんですよね。結局数年で終わっちゃうやり方になる。僕らはエンターテイナーとして今まで通りショーはちゃんとやります。そういう(動物殺処分ゼロという)活動に全人生をささげるっていうことを僕らもしないし、すべきではないし。自分たちのリスナーにもそれを伝えていきたいというのもあって。肩の力を抜かないと続かないぞって。仕事もそうですけど、肩に力が入っていると続かないじゃないですか。続けなければ意味がない。継続は力なりっていうのが、自分たちのモットーとしてあります。

音楽の可能性

ジャパンギビング
今回のブレーメンのライブはいつもと違うアコースティックなものでした。
DJ LOVE
普段とは違う楽器を使ったりしたのでいつもより緊張しましたね。ですが、とても充実した良い経験ができたなと思っています。
ジャパンギビング
音楽を通じて社会問題を変えていくことや気付かせていくことに、期待や不安はありますか?
Nakajin
音楽によってそういったプロジェクトの印象を変えることができるのは強みだと思っています。特に過度に重たく感じられてしまう問題に対しては明るくて楽しい気持ちになるような音楽をマッチングさせることによって、いままで興味を持ってもらえなかった人にも届けるチャンスのあるような取っ付きやすい印象にすることができるのではないかと信じています。あと、音楽が付随することによって生命力の強いプロジェクトになると思います。たとえば数年後にふと街中でその音楽を聴くだけでそのプロジェクトの事を思い出してもらえるかもしれないし。その時になってようやくなにか行動をしてみようと思ってくれる人もいるかもしれません。一方で音楽は必ずしもすべての人に好ましく思われるものではないとも思います。場合によっては疎ましい騒音と感じられてしまう危険性をはらんでいます。「Hey Ho」という楽曲を作る際には、なるべく多くの老若男女に楽しんでもらえるものを心がけました。

世界が広がるチャンス

ジャパンギビング
最後に、12月は寄付月間ということで、みなさんへのメッセージをお願いします。
ー同
SEKAI NO OWARIです。12月は寄付月間です。寄付というものは、自分たちの世界が広がるチャンスになると思うので、是非トライしてみてください。みなさんも寄付について考えてみてください。
ジャパンギビング
SEKAI NO OWARIのみなさん、どうもありがとうございました。

短い時間でしたが、寄付を呼び掛けるということに不安がありながらも、行動を起こしたSEKAI NO OWARIのみなさんから、大変深いお話を伺うことができました。寄付文化が英米より弱いと言われる日本で、決定的に違うのは、ファンドレイザー(寄付を呼び掛ける人)の数。呼びかけた人が集める金額は日本と英米に大きな差はありません。ファンドレイザーが増えることで、寄付で解決する問題も増えるはず。寄付をする人を増やすだけでなく、ファンドレイザーも増やしたい、というのがジャパンギビングの願いです。

楽曲「Hey Ho」では、「誰かからのSOS」に、「この嵐の中、船を出す勇気なんて僕にあるのかい」と自問します。 社会問題に気づいて、実際に支援をする一歩を踏み出すのは少し勇気が必要かもしれません。支援を集めようとする一歩はさらに勇気が必要だと思います。
『「僕ら」が変わるってことは、「世界」を変えるということと ほとんど同じなんだよ』 
「天使と悪魔」の一節を思い出しながら、背中をちょっと押してくれる、そんな勇気をもらうことができたインタビューでした。

SEKAI NO OWARIのみなさん、ありがとうございました。