台湾でのヨウム視察・調査に関する報告書

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以下に西原智昭氏による台湾視察の報告書を公開いたします。どうぞご覧ください。

 

 

台湾でのヨウム視察・調査に関する報告書

西原智昭

NPO法人アフリカ日本協議会理事/ WCS自然環境保全研究員

 

    2017年台湾で開かれた「アジア動物園教育者会議」のときに、アジア台湾ではヨウムがペットとして多く出回っておりしかも価格が安いという情報を得た。現況を確かめるために、201936日から11日にかけて台湾を訪問した。目的は次の3つである。

1)     ヨウムを販売しているペットショップを訪問し、そのヨウムの価格、仕入れ状況、人工繁殖の状況について尋ねる;

2)     ヨウムを飼育している3つの動物園(台北、新竹、壽山)を訪れ、ヨウムの飼育状況やそのヨウムの由来、管理制度、人工繁殖の状況などについて、視察・聞込みを行う;

3)     上記3園において、情報提供により来園者への保全教育普及活動に資するために、動物園スタッフ向けにヨウム保全に関するレクチャーを実施する;

 

 

ペットショップ訪問:

    台湾全体では鳥のペット産業は大きなもので、鳥だけでなく、餌、ケージなどすべての物品も含めて、年商200億円近い巨大ビジネスになっているということであった。ただ鳥のペットショップの老舗は閉店されるところがあるという。これは、歴史的に野鳥飼育の盛んだった状況が法律で規制されたことと、海外との鳥の商取引が困難となったためであろうと考えられている。また、台湾への鳥の輸入が厳格に禁止されているのは、ワシントン条約による規制というよりは、鳥インフルエンザなどによる規制が強いためらしい。

 

    現在の巨大ビジネスを支えているのは各種類の鳥の人工繁殖の成功と広まりにあり、その人工繁殖も大きな施設で一括して実施しているというのではなく、数多くの民間人が自宅の家屋の一部でそれぞれ繁殖させ、ペットショップに卸しているという。

 

 

民間の人工繁殖施設とルリコンゴウインコ©岡元友実子(左);西原智昭(右)

 

 

台湾で最も有名な台北の鳥専門のペットショップ街「鳥街」© Hulu Lee

 

 

「鳥街」の町並み©西原智昭

 

 

「鳥街」で販売されている鳥の陳列状況©西原智昭

 

 

場所によってはショップで幼鳥を飼育©西原智昭

 

 

「鳥街」で売られているケージや飼料、グッズなど©西原智昭

 

 今回の主要対象であるヨウムは、一羽3万円で取引されており、日本での価格の1/10でありたいへん驚きであった。ヨウムは「粉っぽい」との理由から人気はないあるいはヨウム以外にももっと賢いオウム類はいるなどといった言及もあったが、概してヨウムはペットとして最も人気のある鳥であるようだ。

 

 ヨウム以外にも、多数種のオウム類が売られていた。キバタンは一羽6万円から18万円の間で流通しているという。スミレコンゴウインコは実物を見る機会はなかったが、一羽300万円ほどで取引されているという。日本ではキバタンは40万円、スミレコンゴウインコは700万円にも及ぶことを考えると、これらの台湾での価格も日本に比べれば破格の安さである。

 

 

 

 

多数の種類のオウム類がペットショップで売買されていた(左上より時計回りに、キビタイボウシインコ、ワカケホンセイインコ、カタリーナコンゴウインコ、キバタン)©西原智昭

 

 

オウム専門店「新鳥荘」にて:

 オウムを専門に取り扱っているペットショップを訪問した。ここではヨウムを実際に見ることができたので、店主から以下のような様々な情報を得た。また、この店が関わっているオウム類の人工繁殖の写真を多数いただいた。

 

オウム専門店「新鳥荘」の入り口と看板©西原智昭

 

 

1)    台湾全体でヨウムのツガイは約30000組おり、すべて人工繁殖が行われている;

2)    かつては、フィリピン・ルソン島にある鳥の繁殖施設BIIBird Incubation International)という施設と連携を取り、主にそこからヨウムを仕入れていたが、輸送コストなどがかかるため、現在では台湾国内でヨウムの人工繁殖が盛んとなった;

3)    BIIと取引していた時代にはヨウム一羽は約7万円であったが、現在は台湾国内での繁殖個体であるため一羽3万円程度である;

 

4)    台湾で人工繁殖された個体は、台湾国内ほか、中国や香港などに輸出されているが、日本へは輸出していない。

 

 

 

オウム専門店より提供された人工繁殖のオウム類(左上より時計回りに:キビタイボウシインコ、ニョオウインコ、クルマサカオウム、ナナイロメキシコインコ)©新鳥荘

 

 

 なお、この店で見られたヨウム一羽は売り物でなく、一時的な預かりものだとのことであった。元気そうに見えるときもあったが、多くの時間は毛むしりに費やされており、十分に健康そうには見えなかった。ただ個体識別用の脚環は装着されていた。これは台湾の「野生生物保育法」に基づく処置だという。

 

毛むしりばかりするヨウム©西原智昭

 

 

脚環の見える様子(左);元気に飛び回っている様子(右)©西原智昭

 

 

オウム専門店の店主からもらったヨウムの人工繁殖の写真©新鳥荘

 

 

ヨウムの個体識別は台湾の法律で速やかに実施されている©https://ourisland.pts.org.tw/content/%E9%B8%9A%E9%B5%A1id-%E5%8D%B3%E5%88%BB%E5%95%9F%E5%8B%95

 

 

民間の繁殖施設:

 民間の繁殖場では主にオウム類のブリーディングが行われている。どこも夕方から夜にかけての営業が多いと聞くが、これはそうした人工繁殖が片手間の副業だからであろうか。

 新竹市で訪れた「皇家鸚鵡繁殖場」という人工繁殖を行っている民間の繁殖施設では、オウム類ほか、カワセミ類(ワライカワセミ)に必要な餌用の小ネズミなど小動物の飼育も行われていた。主人からは、同僚の台湾人が北海道にて同じく人工繁殖を実施しており、ときどきそこからも仕入れるという情報が得られた。北海道は土地が比較的安い上、日本は海外からの輸入が簡単であり、野生動物飼育規制も緩いことから、人工繁殖の操業と台湾への輸出が可能だという。この事実は日本にとって管理上の由々しき事態を物語っている。この北海道の繁殖施設の住所は入手しているので、機会を見て訪問する予定である。

 概して言えば、人工繁殖そのものは違法行為でなく進められているようである。現時点では、店頭だけでなく、ネットショップでも、鳥のペット商売は盛んであるという。ネットショップは一般に規制が難しいため、違法物が混入される恐れがあるので、今後中止していかなくてはならないであろう。ただ、海外から新たな鳥が入手されない現況で、人工繁殖において近親交配の確立が高くなり、足などに奇形を持つ個体も出始めているという点が問題であるとも指摘された。

 その一方、人工繁殖には強い規制がかかっていないため、民家などでの人工繁殖個体が逃げ出し、ヨウムのほかキバタンなど台湾の地元の山に飛んでいってしまった事例も後をたたないという。台湾は亜熱帯なので、気候的にはヨウムなどは山でも暮らせるようにみえるが、適切な食料の有用性の有無、個体数も少ないなどの点から、生きながらえないと考える。人工繁殖場の管理と規制が望まれるところである。

 

 

台湾のSNS上で公開された「山に逃げた人工繁殖のヨウム」© Hulu Lee

 

 

3つの動物園におけるヨウム:

 どの動物園に置いても共通なのは、現在飼育中のヨウムはペット保有者からの提供であることであった。ただ、ヨウムが人気ペットとして台湾で広く出回っている中、そうした動物園への提供の数が増加している傾向にはないとのことで、台湾国内でヨウムの転売の可能性が高いこと、ペット業界のヨウムが他国へ輸出されていることなどが要因であろうと考えられる。

 

台北市台北動物園:

 

 オウム園(Parrot House)という広い放飼場にて、他のオウム類とともにヨウム一羽が飼育されていた。遠くからの観察ではあったが、特に健康状態で問題がありそうには見えなかった。

 

台北動物園でのヨウム(右:中央上部にヨウムの姿あり)©西原智昭

 

 

 台北動物園のスタッフを対象にした野生のヨウムに関するレクチャーには約50人が参加した。「仮にヨウムの密猟者からヨウムを押収・野生復帰をさせても、ヨウムの違法捕獲は繰り返し再発するのであれば、押収したヨウムで人工繁殖を行いペット需要を賄うべきではないか」との質問に対しては、「絶滅にひんしている現況では放鳥により野生復帰させるのが再優先事項であり、同時に密猟の取締も強化しつつある。また需要を賄うべく新たに人工繁殖を目指すよりはペット需要の抑制と動物園などですでに飼育されているヨウムをつかっての人工繁殖の研究を追究すべきだ」と答える。

 

新竹市新竹動物園:

    現在、動物園全体が改築工事中であったが、仮施設の中にヨウムは一羽飼育されていた。毛並み等からは特に不健康そうには見えなかった。

 

新竹動物園のヨウム©西原智昭

 

 

 ここの動物園はもともと規模が小さいため、レクチャーへの参加人数も13人と少なかったが、活発な質問が出た。ヨウムの現地末端価格とその平均給与との比較、現地の法規制や刑罰、司法の問題、違法行為が生じないための経済・食糧支援の現況などについて、問われた。また、アフリカ現地では困難であろうが密猟者から押収したオウムを他国へ持ち出しての人工繁殖の可能性も問われたが、輸送中にストレスで多数の死を招きかねないことと、すでに南アフリカ共和国で人工繁殖が進められているが野生のヨウムの混入がなければより効率的な人工繁殖は望めないとの見解が出ている旨を説明した。

 

高雄市壽山動物園:

 飼育されているヨウム二羽は、極めて健康そうな状況であった。ひとつには飛翔できる広い空間にいることと、複数頭飼育であることが理由であるように思われた。

 レクチャーには25人ほどの参加者があったが、新竹動物園と同様な内容の質問が多数出た。なお、高雄市からさほど遠くない屏東にある、押収された鳥を保護するレスキューセンター(屏東科学技術大学の野生動物レスキューセンター)があるとのことで、次回機会があれば訪問したく思っている。

 

壽山動物園におけるヨウム二羽©西原智昭

 

 

まとめ:

1.     台湾では、困難であると言われていたヨウムの人工繁殖がスムーズに行われているようであり、ヨウムほか鳥のペット業界は一大産業となっている。ヨウム価格も日本の10分の一程度である。ヨウムの個体識別や新たなヨウムの輸入規制はあるものの、人工繁殖への規制が緩く、人工飼育場から野外に放鳥されてしまう個体や、近親交配の危険性、合法性を規制しにくいネット販売の拡大、頻繁な転売の可能性など今後の課題は小さくない。

2.     台湾人によるオウム類の人工繁殖施設が北海道にあることを突き止めたため、機会を見て現地を訪問したい。

3.     ヨウムを飼育している台湾の動物園で共通なことは、飼育施設が大きく、他のオウム類と同所的に飼育している点である。結果的に、飼育個体の健康状態は良好である。ヨウムを保有している日本の動物園も、ヨウムにストレスを与えあかねないショーは控え、ヨウムの単独飼育の場合は他園と協力し可能な限り複数頭飼いを試みると同時に、飼育舎の大型化と他のオウム類との同居をも鑑みるべきである。

 

4.     高雄市からさほど遠くない屏東にある、押収された鳥を保護するレスキューセンターのようなものがあるとのことで、次回機会があれば訪問したく思っている。

 

 

 

 

 

アフリカ日本協議会

作成日時: 2019/04/08 22:55

プロジェクト: 絶滅の危機にあるヨウムを救いたい!